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コラム

【令和2年度税制改正】法人に係る消費税の申告期限の特例の創設その1(確定申告)

アイキャッチ

1  改正の背景及び改正前の制度の概要

消費税の確定申告については、原則、課税期間ごとに確定申告書を課税期間の末日の翌日から2月以内に提出しなければならない(消法45(1))。
 法人税の確定申告書についても原則として各事業年度終了の日の翌日から 2 月以内に提出することとされているが(法法74(1)、81の22(1)、144の 6 (1))、法人税の確定申告は「確定した決算に基づき」行う必要があるため各事業年度の決算を確定させるために必要な定時総会が、一定の事由により、当該各事業年度終了の日の翌日から2月以内に招集されない常況にあると認められる場合には、その法人の申請に基づき、各事業年度の確定申告書の提出期限を原則として1月間(連結親法人の場合は2月間)延長することができることとされている(法法75の 2 (1)、81の24(1)、144の 8 )。

これまで消費税法では、取引ごとに課税関係が明らかになるという消費税の性格上、必ずしも法人税のように確定した決算に基づき確定申告を行う必要がないことから、原則として確定申告書の提出期限を延長する特例は設けられていなかった。

(注) 個人事業者については、所得税の確定申告書の提出期限(毎年の3月15日)や納税事務処理能力等に配慮して、その年の12月31日を含む課税期間に係る確定申告書の提出期限を翌年3月31日とする特例が設けられてる(措法86の4 )。

このように制度上の違いがあるため、法人税の確定申告書の提出期限が延長されている法人では法人税と消費税の確定申告書の提出期限に差異が生じることとなりるが、そうした法人においては、
・決算期末から 2 月の間に、決算書作成、決算発表、有価証券報告書への対応、消費税の確定申告書の作成等の業務が集中することにより、相当程度の時間外労働が発生している
・ その後の法人税の確定申告書の作成の過程で、消費税の申告内容に誤りが見つかった場合には、消費税の修正申告書の作成又は更正の請求に必要な書類の作成が必要となり、これらに伴う事務負担が発生しているといった実務面での負担についての指摘が産業界から寄せられていた。

2  改正の内容

働き方改革関連法の施行により、時間外労働の上限規制の導入等の措置がなされたこと等を踏まえ、上記のような申告に係る事務負担を軽減する観点から、法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例により法人税の確定申告書の提出期限が延長されている法人について消費税の確定申告書の提出期限を 1 月間延長する特例を創設することとされた(消法45の 2 )。

(1)適用法人等

 消費税申告書を提出すべき法人のうち、法人税法第75条の2第1項の規定による法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例の適用を受ける法人が、消費税申告書の提出期限を延長する旨を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、その提出をした日が含まれる事業年度以後の各事業年度で法人税法第75条の2第1項の規定により法人税の確定申告書の提出期限が延長されている事業年度の終了の日が含まれる課税期間の消費税申告書の提出期限については、1月間延長して、その課税期間の終了の日の翌日から 3 月以内とすることとされた(消法45の 2 (1))。

(2)連結法人への適用

 本特例については、法人税法第81条の24第1項の規定により連結確定申告書の提出期限の延長の特例の適用を受ける連結親法人も対象となる。また、連結子法人については、法人税の確定申告を行う必要がなく、同項の規定の適用を受けることはないが、連結子法人も消費税申告書の提出は必要なため、連結親法人が同項の規定による連結確定申告書の提出期限の延長の特例の適用を受ける場合には、その連結子法人についても、本特例の対象となる。
 連結親法人及び連結子法人が本特例の適用を受けるためには、それぞれの法人が消費税申告書の提出期限を延長する旨を記載した届出書をそれぞれの納税地を所轄する税務署長に提出する必要がある。

連結親法人及び連結子法人が届出書を提出した場合、届出書を提出をした日が含まれる連結事業年度以後の各連結事業年度で以下の連結事業年度の終了の日が含まれる課税期間に係る消費税申告書の提出期限については、 1 月間延長して、その課税期間の終了の日の翌日から 3 月以内とすることとされた(消法45の 2 (2))。
 なお、法人税法第81条の24第 1 項の規定による連結確定申告書の提出期限の延長期間は、原則として2月間ですが、これは連結納税制度固有の事情によるものであることから、消費税申告書の提出期限の延長期間については連結法人においても1月間となる。

(3)適用取りやめ等の届出

 本特例の適用を受けることをやめようとするときや事業を廃止したときは、その旨を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない。
この届出書の提出があったときは、その提出をした事業年度(連結事業年度)以後の事業年度(連結事業年度)終了の日が含まれる課税期間については、(1)又は(2)の届出は、その効力を失うこととなる(消法45の2(3)(4))。

(4)利子税の納付

 消費税法においてはこれまで利子税に関する規定は設けられていなかったが、本特例の創設に伴い、その適用を受ける課税期間の消費税の額に、本来の提出期限の翌日から延長された提出期限までの期間の日数に応じ、年7.3%の割合を乗じて計算した金額に相当する利子税をその計算の基礎となる消費税に併せて納付しなければならないこととされた(消法45の2 (5))。

3  適用関係

 上記の改正は、令和 3 年 3 月31日以後に終了する事業年度及び連結事業年度終了の日が含まれる課税期間について適用することとされている(改正法附則 1 、45)。

 【参照】財務省HP

 (2020年4月記載)

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