【完全版】個人事業主の節税対策を税理士がわかりやすく解説!

個人事業主にとって、少しでも利益を手元に残すための節税対策は欠かせません。
とはいえ一口に節税対策と言ってもさまざまな方法があり、何をやるべきか悩む方も多いでしょう。
本記事では、個人事業主におすすめの節税対策をわかりやすく解説します。
・個人事業主の経費はぶっちゃけどこまで計上できる?
・年収1,000万円の個人事業主におすすめの節税対策は?
など、個人事業主の節税に関するよくある質問にもお答えしているので、税負担にお悩みの方はぜひお役立てください。
飲食店経営者向けの節税対策は、以下の記事もご参照ください。
飲食店の節税対策を税理士がわかりやすく解説
![]() | <この記事の監修者> 吉本 貴幸(よしもと たかゆき) 税理士法人吉本事務所 代表社員 税理士・行政書士 1973年生まれ 法学修士。1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。 |
個人事業主が支払う税金の種類
個人事業主が納める税金には、所得税、住民税、個人事業税、消費税の4つがあります。
このうち、個人事業税と消費税については一定の条件を満たした事業主が課税の対象です。
また、税金の種類が国税か地方税かによって支払い先が異なるため、個人事業主として申告・納税の義務をしっかり果たすためにも、それぞれの概要を理解しておきましょう。
所得税
所得税とは、その年の1月1日〜12月31日までの1年間で得た所得に課される国税です。
納税先は国で、個人事業主の場合は翌年の2月16日〜3月15日までに確定申告を行い、納めなければなりません。
所得額に応じて税率が変わる超過累進課税制度が採用されており、所得から各種控除を差し引いた額に課税されます。
なお、2037年までの所得については、税率2.1%の復興特別所得税も課されるため注意しましょう。
住民税
住民税とは、自分の住んでいる、または事業所を置く都道府県や市区町村に納める地方税です。
都道府県民税と市区町村民税があり、所得に応じて負担を求める一律10%の所得割と、所得に関係なく定額の負担を求める均等割という2つの税率によって納税額が算出されます。
納税する際は、確定申告後に都道府県または市区町村から送られてくる納付書にて支払うため、申告さえしていれば特別な手続きをする必要はありません。
6月に一括払いをするか、6・8・10・1月の年4回に分けて納税するかを選択できるため、自身の状況に合った方法で納めましょう。
個人事業税
個人事業税は、特定の事業を行なっている場合にのみ課される地方税です。
支払い先は都道府県となり、地域や業種ごとに税率が異なります。
納税時期は原則8月と11月の年2回で、事業所得が290万円以下の場合は課税されません。
また、納税方法としては都道府県税事務所から送付される通知に従って納めるのが通例です。
消費税
消費税は、商品やサービスの提供を受けた消費者が負担する国税です。
取引によって8%、または10%と税率が異なる複数税率が採用されています。
個人事業主は課税期間中の「課税売上に係る消費税額」から「課税仕入れに係る消費税額」を差し引いて、翌年の3月31日までに申告・納税しなければなりません。
また、前々年の売上が5,000万円以下である場合等では、「簡易課税」という簡単な計算方法が使えます。
ただし、前々年の売上高が1,000万円以下の場合は、一定の場合を除き納税義務は免除されます。
なお、前年の1月1日〜6月30日までの売上高または給与支払総額が1,000万円を超えた場合は、納税の義務が発生することもあるため注意しましょう。
個人事業主におすすめの節税対策11選
ここから個人事業主ができる節税対策を紹介します。
自分の状況に合った方法を選び、より効果的に節税を実現しましょう。
1.青色申告を選択する
確定申告の方法には「白色申告」と「青色申告」がありますが、青色申告をすることで最大65万円の特別控除が受けられます。
さらに、家族従業員に支払った給与を必要経費として計上できるというメリットもあり、非常に節税効果の高い申告方法です。
青色申告で最大65万円の特別控除を受けるには、次の要件を満たす必要があります。
| ・事業的規模の不動産所得または事業所得があること ・所得についての取引を複式帳簿で記帳していること ・確定申告書に損益計算書と貸借対照表を添付すること |
また、令和2年分の確定申告からは「e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存」を行うことも要件に追加されました。
従来の要件で申告する場合の控除額は55万円で、要件に満たない、あるいは法定申告期限に間に合わなかった場合は10万円の控除が適用されます。
青色申告は帳簿方法が複雑で作成する書類も多いものの、上記以外にもさまざまなメリットがあるため、青色申告の対象であればぜひ切り替えましょう。
国税庁:青色申告特別控除
<注意点!>
基本的に会計ソフトを利用していないと、55万円控除・65万円控除を利用することは難しくなります。
2.経費を正確に計上する
個人事業主が納める税金のうち、所得税・住民税・個人事業税は所得金額が納税額の算出基準になります。
課税の対象となる所得金額は、年間の売上から必要経費や所得控除を差し引いた額です。
そのため、一つひとつの経費は少額でも漏れなく正確に申告することで、課税対象所得を減額できるため、節税対策につながります。
ここからは正しい経費処理について理解を深めるためにも、経費に計上できる費用とそうでないものを確認しておきましょう。
経費に計上できる費用
事業を行ううえで必要な費用は、すべて経費に計上できます。
たとえば次のような支出が挙げられます。
| ・旅費交通費 ・広告宣伝費 ・接待交際費 ・消耗品費 ・地代家賃 ・水道光熱費 ・通信費 ・給料賃金 ・福利厚生費 |
また、税金も事業にかかわるものは経費に計上できます。
具体的には次の通りです。
| ・個人事業費 ・消費税 ・固定資産税 ・自動車税 ・自動車重量税 ・不動産取得税 ・登録免許税 ・印紙税 |
なお、自宅を事務所にしている場合は、家賃や水道光熱費、通信費、固定資産税などの事業に使用している分を按分計算すれば、経費として計上できます。
経費に計上できない費用
生活費や娯楽費など、事業とは関係ないプライベートの出費は経費に計上できません。
また、たとえ事業にかかわる費用だとしても、必要以上に使われたものは全額が経費として認められない場合もあります。
その他、健康診断費用をはじめとする事業主自身やその家族の福利厚生に関する費用や、所得税・住民税などの税金も経費の対象外です。
3.控除制度を活用する
前述の通り、所得金額は年間の売上から必要経費と所得控除を差し引いて算出されるため、控除制度を活用すれば所得税や住民税などの課税対象所得が少なくなり、納税額をさらに下げることができます。
代表的な所得控除は次の通りです。
| ・社会保険料控除 ・小規模企業共済等掛金控除 ・生命保険料控除 ・地震保険料控除 ・配偶者(特別)控除 ・扶養控除 ・ひとり親控除 ・寡婦控除 ・障害者控除 ・勤労学生控除 ・基礎控除 ・雑損控除 ・医療費控除 ・寄附金控除 |
また所得税に関しては、求められた所得税額から一定の金額を控除する「税額控除」が利用できます。
税額に対して適用される控除であるため、所得控除よりも高い節税効果が得られるでしょう。
税額控除には次のようなものがあります。
| ・配当控除 ・住宅借入金等特別控除 ・政党等寄附金特別控除 |
これらの控除が多ければ多いほど大きな節税効果が得られるため、経費同様漏れなく申告しましょう。
控除制度についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。
サラリーマン向けの記事ではありますが、控除制度を詳しく解説しています。
節税対策に有効な控除制度を税理士が解説
4.少額減価償却資産の特例を受ける
少額減価償却資産とは、取得価格が30万円未満の固定資産のことです。
特例により、少額減価償却資産を購入した個人事業主は、本来税法上の耐用年数で割った金額を数年にわたって分割計上するところ、その年度にまとめて経費計上できます。
ただし、常時使用する従業員が500人以下の中小企業者かつ青色申告をしていることが条件です。
また、年度内に購入した資産が300万円を超えた部分は適用されません。
特例を受けると経費を前倒しで処理できるため、黒字の年に活用すれば高い節税効果が得られるでしょう。
5.短期前払費用の特例を受ける
短期前払費用の特例は、地代家賃をはじめ、ソフトウェアやネット利用料、生命保険料など一定の前払費用を年払いした場合に全額を当期の経費として計上できる制度です。
月払いにすると翌月の利用料を前倒しで支払うことになるため、サービスを受ける実際の月になるまでは経費にできません。
しかし、この特例を利用すればその年に経費計上できる金額が増えるため、課税対象となる所得を減額できます。
なお、短期前払費用の特例を受けるには、以下のような要件を満たす必要があると考えられます。
| ・年払いについて記載された契約書があること ・継続的なサービスであること ・実際に料金を支払っていること ・料金の支払い後1年以内にサービスの提供を受けていること ・支払方法や経理方法を継続すること ・売上にかかわる費用でないこと |
特に支払方法や経理方法については注意が必要で、一度年払いの契約をすると以後の年度も継続しなければなりません。
そのため、短期前払費用の特例を利用する際は、実務上の煩雑さも考慮して、翌年以降も継続してこの特例の適用を受けるか検討することが非常に大切です。
6.共済制度に加入する
個人事業主が加入できる共済制度には、掛金が全額所得控除になるものがあります。
ここでは「小規模企業共済制度」と「経営セーフティ共済」の概要とメリットについて解説します。
小規模企業共済制度
小規模企業共済制度は、中小企業の経営者や個人事業主を対象とする退職金のような制度です。
月額1,000〜70,000円の任意の金額を掛金として支払えば、廃業時や退職時に給付金を受け取れます。
小規模企業共済の掛金は全額が所得控除の対象となるだけでなく、前述した短期前払費用の特例も利用できるため、節税面でも大変メリットの大きい制度と言えるでしょう。
ただし、加入するには業種や従業員数など一定の条件を満たす必要があります。
また、共同経営者の要件を満たさない家族や生命保険外務員などは加入できません。
中小機構:小規模企業共済
経営セーフティ共済
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、中小企業と個人事業主が連鎖倒産の危機や経営難へと陥った場合に資金融資が受けられる共済制度です。
月額5,000〜200,000円の掛金を支払うことで、たとえば取引先企業が倒産した際は無担保・保証人なしで掛金の最大10倍、または回収困難となった売掛金債権などのどちらか少ないほうの金額を借入できます。
掛金は必要経費として全額計上できるため、節税対策にも有効です。
ただし、経営セーフティ共済に加入するには、所定の業種・資本金の額・従業員数で構成された事業を1年以上行なっている必要があります。
中小機構:経営セーフティ共済
7.iDecoやNISAを利用する
iDeco(個人型確定拠出年金)やNISAといった制度の利用も、個人事業主にとって効果的な節税対策です。
それぞれの概要とメリットを解説します。
iDeco
iDecoは20歳以上60歳未満の国民年金・厚生年金加入者なら、誰でも加入できる年金制度で、老後資金の積立を目的としています。
掛金の拠出から運用・管理をすべて加入者自身で行い、掛金と運用益の合計額を受給できるため、実際に支払った掛金より多く受け取れることもあります。
運用益や受給金の一定額にも税金がかかりません。
個人事業主の場合、毎月最大6万8,000円(年間81万6,000円)まで掛金を拠出でき、全額が所得控除の対象となります。
小規模企業共済とiDeCoは併用も可能です。
ただし、iDeCoは原則途中解約が不可で、60歳まで引き出せないという点に注意しましょう。
NISA
NISAに加入すると、NISA口座内で毎年一定額の範囲内で購入した株式や投資信託の売却によって得た利益や配当金が非課税になります。
一般的な株式や投資信託などで得た利益には約20%の税金がかかることから、非常に節税効果の高い制度と言えるでしょう。
iDecoやNISAは節税だけでなく資産形成にも有用な制度であるため、個人事業主としてはぜひ活用していきたいところです。
8.ふるさと納税を利用する
ふるさと納税は、自分の好みや縁で選んだ自治体に対し、寄附として税金を納められる制度です。
ふるさと納税をすると、寄附先の自治体から返礼品が受け取れるほか、寄附金の2,000円を超えた部分については、原則として所得税と住民税が全額控除されます。
ただし、ふるさと納税はあくまでも前払いした税金が控除されるという仕組みであるため、納税額が減るわけではありません。
厳密には節税対策と言えませんが、返礼品がもらえるという点でお得な制度と捉えておきましょう。
9.得な消費税の申告方法を選択する
消費税の計算は「一般課税」が原則ではありますが、要件を満たすと「簡易課税」を選択することができます。
簡易課税とは、みなし仕入率を適用して簡易に計算する方法のことで、実際の税額より少なくなる場合があります。
とはいえ実際の税額より多くなる場合もあるため、一概に簡易課税が得とは言い切れません。
一般的には税理士がどちらが得かを毎年判定するので、わからないことがあれば相談してみるとよいでしょう。
10.社用車を購入する
社用車の取得費や維持費は経費に計上できるため、事業に必要であれば車を購入するのも一つの方法です。
新車と中古車では減価償却に用いる耐用年数が異なるため、節税を考慮するなら中古車を購入するとよいでしょう。
ただし、単に車を購入することで節税できるわけではありません
事前にどれほどの節税効果が得られるかや、維持費、購入のタイミングなどをよく検討する必要があります。
詳しくは以下の記事で解説しています。
車の購入による節税対策を税理士が解説
11.法人化を検討する
事業の発展によって課税対象となる所得が増えてきた場合は、法人化をすることでさらに節税できる可能性があります。
なぜなら個人事業主が納める所得税は、所得が大きくなるほど税率も高くなる超過累進課税制度が採用されていますが、法人が支払う法人税はほぼ一律だからです。
法人税は以下の税率が適用されます。
| 区分 | 所得金額 | 法人税率 |
| 資本金1億円以下の普通法人 | 年800万円以下の部分 | 15% |
| 年800万円超の部分 | 23.20% | |
| 上記以外の普通法人 | 全額 | 23.20% |
(注:所得金額の平均が15億円を超えるなどの一定の要件の法人を除きます)
その他の税金を考慮すると、個人事業主としての課税対象所得が800~900万円以上であれば、法人化したほうが税率面で有利になる可能性が高いでしょう。
ただし、一概には言えないため、法人化を検討する際は税理士に相談すると安心です。
また、法人化には「役員報酬に給与所得控除が適用できる」「赤字を最大10年まで繰り越せる」「役員などを対象とした保険を損金算入できる」といったメリットもあります。
もちろん、法人化するには登記をはじめとする組織構築や経理処理などの費用と手間がかかりますが、節税効果の高さを考えれば検討すべきと言えるでしょう。
年収1,000万円の個人事業主におすすめの節税対策
冒頭でもお伝えしたように、個人事業主の節税対策は経費や控除の金額を大きくすることで、課税所得を小さくします。
なお、住民税は税率が一律ですが、所得税は所得が高くなるほど税率が上がる(累進課税)ため、ふるさと納税やiDeCoなどの控除も活用して税負担を軽減しましょう。
年収1,000万円の個人事業主におすすめの節税対策は、以下の通りです。
| 1.青色申告特別控除(最大65万円) 青色申告承認申請書を提出し、正規の簿記(複式簿記)で記帳し、e-Taxで申告することで、最大65万円の控除が受けられます。 ただし、基本的に会計ソフトを利用していないと55万円控除・65万円控除の利用は難しくなる点に注意してください。 ※詳細は前章をご参照ください。 2.家族間で所得分散 事業に実際に従事している配偶者や親族がいる場合は、「青色事業専従者給与」を活用できます。 これは家族に支払った給与が経費として認めてもらえるということです。 ただし、税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、一定の要件を満たす必要があります。 税務調査があれば、実際に従事している仕事内容と支払った給与が妥当であるかを確認されます。 3.配偶者控除・配偶者特別控除 生計を共にする配偶者がいる場合は、要件を満たすことで配偶者控除や配偶者特別控除を受けられます。 4.扶養控除 年齢16歳以上の扶養親族がいる場合は、要件を満たすことで扶養控除を受けられます。 5.保険料控除 生命保険、地震保険、医療保険といった保険料を支払っている場合、総所得から一定額を控除できます。 6.医療費控除・セルフメディケーション税制 本人もしくは生計を共にする家族や親族のために支払った医療費が一定額を超える場合に申請できます。 ただし、医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか1つしか適用できない点に注意してください。 7.住宅ローン控除 住宅ローンを組んでマイホームを購入したときに一定の要件を満たす場合、最長13年間の減税措置を受けられます。 新築でも中古物件でも控除を利用できます。 8.小規模企業共済 個人事業主のための退職金制度で、掛金が全額所得控除の対象となります。 毎月最大7万円(年間84万円)まで積み立てでき、廃業・引退時に共済金として受け取れます。 ※詳細は前章をご参照ください。 9.iDeCo(個人型確定拠出年金) 個人事業主の場合、毎月最大6万8,000円(年間81万6,000円)まで掛金を拠出でき、全額が所得控除の対象となります。 小規模企業共済とiDeCoは併用も可能です。 ※詳細は前章をご参照ください。 10.国民年金基金 国民年金の上乗せ年金制度で、掛金は全額所得控除の対象です。 iDeCoとの併用もできますが、掛金の上限額が調整されます。 11.ふるさと納税 寄附した金額の一部が所得税・住民税から控除される制度です。 所得が高いほど、より多くの金額を控除できます。 ※詳細は前章をご参照ください。 12.経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済) 中小企業倒産防止共済は取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。 掛金を経費に計上できますが、創業から2年目でなければ加入できないなど、加入に際して条件があります。 ちなみに掛金は5,000円/月~200,000円/月で、経営難に陥ったときは掛金の10倍まで借入できます。 ※詳細は前章をご参照ください。 13.災害や盗難被害 ないに越したことはありませんが、災害や盗難の被害にあったときは「雑損控除」または「災害減免法による税金の軽減・免除」のいずれかの控除を受けることができます。 |
もし1,000万円を超える場合は、 法人化を検討するまたは税理士へ相談し、税負担が少しでも軽減できるように対策してください。
売上の過少申告は脱税に
年収(売上)が1,000万円を超える事業者が消費税の納税義務を免れるために、1,000万円を下回るように売上の過少申告をする場合がありますが、税務署は売上が1,000万円付近の事業者がきちんと消費税の申告をしているかどうか、常に目を配っています。
税務署は納税者の銀行の履歴を見ることができ、また税務署のネットワークで誰が誰にいくら物を売った、サービスを提供した、などの情報収集が年々精度を増しています。
税務調査では売上の過少申告の場合、最長7年間遡って追加の税金とペナルティの税金を課せられ、その金額は非常に大きなものとなるケースが多いのです。
節税で売上を抜くのはご法度とも言えます。(売上を抜くのは脱税ですね)
利益が出過ぎた場合におすすめの節税対策
結論から言うと、利益が出過ぎた場合は経費を増加させることが1番おすすめです。
ただ、利益が出過ぎたということは従業員も忙しい1年だったと推測されるので、少しは従業員に還元することも必要でしょう。
利益が出過ぎた場合におすすめの節税対策は、以下の通りです。
| 1.設備投資(新しい設備や機械、車両の購入) 減価償却は設備等を購入し使用を始めてから月数按分で経費となるので、決算直前の購入では経費計上できる金額は限られます。 ただし、消費税は月数按分でなく決算内に購入すれば、全額が消費税の経費となります(簡易課税でなく原則計算をしている場合)。 2.少額減価償却資産の購入 中小企業者が対象で30万円未満の減価償却資産を取得した場合に適用されます。 1のように月数按分する必要がなく、全額が経費になります。 消費税は、1と同じく全額経費になります。 3.広告宣伝(ホームページの制作や大幅な改修・SEO対策・WEB広告など) 投資的な意味合いがあり、利益がさらなる売上を生む場合もあります。 ただし、近年は人出不足の業界が多く、広告宣伝で仕事が増えたときの人出の確保も考えておく必要があります。 4.経営セーフティ共済への加入 節税対策として有効ですが、解約時期によっては元本割れになるので加入の際は要検討です。 5.個人所有資産を法人に貸付 賃借料は安すぎると経費にならない場合もあるので注意が必要です。 また、賃借料を受け取った個人は原則確定申告をする必要があります。 6.不要な固定資産の処分 売却で損失が出れば固定資産売却損、除却する際は固定資産除却損、廃棄する際は固定資産廃棄損として経費に計上できます。 ただし、決算内にする必要があります。 7.不要な在庫の処分 不要な在庫を減らして棚卸資産を減らします。 ただし、決算内にする必要があります。 8.短期前払費用の特例 決算内に来期分のオフィス賃料やリース契約料を前倒しで支払えば、今期の経費として処理できます。 9.法人保険 経費計上できる割合が減りましたが、利益のあるときに加入するメリットは少なからず残っています。 10.新規事業への投資 |
<ポイント!>
将来の事業拡大や不測の事態に備えて、利益の一部を内部留保しておくのも一つです。
利益に税金はかかりますが、会社に現預金で資金を残すことができます。
不測の事態で会社が倒産しない体力を付けることは、会社の持続可能な経営には不可欠です。
従業員へ還元するには
利益が出過ぎた場合に従業員へ還元する方法として、以下が挙げられます。
| 1.福利厚生 福利厚生費としてレクリエーションなどを企画します。 2.健康診断 通常の健康診断ではなく、人間ドックをプレゼントするのもよいでしょう。 人間ドックは消費税の経費にもなります。 3.決算賞与 従業員へ特別ボーナスを支給します。 ただし、決算内に経費計上するには税務上の要件を満たす必要があります。 |
個人事業主の税金を計算する方法
個人事業主が納める税金のうち、所得税・住民税・個人事業税は自身で計算が可能です。
ここでは、それぞれの計算方法について解説します。
所得税の計算方法
まず事業に対する所得税は、以下の計算式で求められます。
| 所得税額=課税対象所得額(収入-経費-所得控除)×税率-税額控除 |
なお、所得税率は課税対象所得額に応じて変動するため、次の表で確認しましょう。
<所得税の税率一覧表>
| 課税対象所得額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000~ 1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円~ 3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円~ 6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円~ 8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円~ 17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円~ 39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
忘れてはならないのは、先述の通り2037年までの所得には税率2.1%の復興特別所得税も上乗せされるということです。
なお、復興特別所得税の計算には次の計算式を用います。
| 復興特別所得税=所得税額×0.021 |
住民税の計算方法
住民税を計算する際に注意が必要なのは、「所得割額」と「均等割額」の2つを合算しなければならないという点です。
どちらも住んでいる地域によって若干異なるものの、一般的には所得割が都道府県民税と市区町村民税を合わせて10%、均等割は5,000円に設定されています。
住民税を求める際の計算式は、次の通りです。
| 住民税額=課税対象所得額×0.1(所得割)-税額控除+5,000円(均等割) |
個人事業税の計算方法
個人事業税は、以下の計算式で求められます。
| 個人事業税額=(前年の課税対象所得額-事業主控除)×税率(3~5%) |
税率は業種によって3~5%と変動しますが、ほとんどの業種が5%に該当します。
業種ごとの税率は都道府県のホームページを確認するとよいでしょう。
なお、個人事業税は事業を1年以上行なっている場合に一律290万円の事業主控除が適用される一方、青色申告特別控除などの適用は認められない点に注意が必要です。
消費税の計算方法
先述の通り、消費税の計算方法は一般課税と簡易課税に分かれます。
一般課税の計算方法は以下の通りです。
| 一般課税の消費税額=課税売上に係る消費税額-課税仕入れに係る消費税額 |
簡易課税は、みなし仕入率を適用し以下の式で計算します。
| 簡易課税の消費税額=課税売上に係る消費税額-(課税売上に係る消費税額×みなし仕入率) |
みなし仕入率は業種に応じて変動するため、次の表を確認しましょう。
<みなし仕入率一覧表>
| 区分 | 業種 | みなし仕入率 |
| 第1種事業 | 卸売業 | 90% |
| 第2種事業 | 小売業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) | 80% |
| 第3種事業 | 農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、建設業、製造業など | 70% |
| 第4種事業 | 飲食店業など | 60% |
| 第5種事業 | 運輸・通信業、金融・保険業、サービス業 | 50% |
| 第6種事業 | 不動産業 | 40% |
個人事業主の節税に関するよくある質問
個人事業主の経費はぶっちゃけどこまで計上できる?
先述の通り、事業を行ううえで必要な費用であればすべて経費に計上できます。
業種ごとに必要な費用が変わるため、一概にどこまで計上できるとは言い切れません。
また、「プライベートの費用を計上してもバレないのでは?」と思う方がいるかもしれませんが、税務調査で発覚すれば自ら余計な税負担を増やすことになります。
「個人事業主は経費を計上できてずるい」と思われがちではあるものの、経費を使った分だけ出費が増えるため、無駄遣いにも注意しなければなりません。
個人事業主が節税できる裏ワザは?
節税に裏ワザと呼べるような方法はありませんが、上記の対策を行うことで納税額が減らせます。
より効果的な節税につなげるには、経費の種類や処理方法について正確な知識を身に着けることも大切です。
個人事業主の税金対策で買うものは?
個人事業主の税金対策で買うものとしては、以下のようなものを検討するとよいでしょう。
| ・事務所などに備蓄するための非常食 ・定期的に購入かつ消費しているもの ・20万円未満の資産(一括償却資産) |
ただし、状況によっては経費に認められない場合があるため、わからないことがあれば税理士に相談することをおすすめします。
個人事業主の経費に上限はある?
基本的には、経費に計上できる金額に上限はありません。
ただし、必要以上と判断された場合は経費に認められない可能性があります。
経費を計上するには、費用が事業に使用されたことを証明できる書類が必要です。
商品・サービスの代金を支払ったときのレシートや領収書は必ず受け取り、保管しておきましょう。
なお、領収書が発行されない支出や紛失した場合は、出金伝票に日付・金額・目的・サービス内容などを記入することで領収書代わりになります。
過度な節税は違法になる?
税法の範囲を超えてしまうような過度の節税対策は、意図的ではなくとも脱税になってしまう可能性があります。
知識がないままの安易な節税対策も、違法になりかねないため注意が必要です。
また個人の状況によって適した対策は異なるので、法に則って正しい節税を行うためには税理士のサポートを受けると安心です。
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個人事業主が抱える「青色申告で節税対策をしたいが、帳簿や経費処理の方法がわからない」「自己判断の節税に不安がある」といったお悩みに強い税理士が多数在籍しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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まとめ
個人事業主が確定申告をする際は、経費を正しく計上したりさまざまな控除制度を活用したりすることで納税額を大幅に抑えられる場合があります。
また、「青色申告を選択する」「少額減価償却資産や短期前払費用の適用を受ける」「共済制度に加入する」「iDecoやNISAを利用する」「法人化を検討する」なども節税において非常にメリットの大きい方法であるため、自分の状況に合わせて積極的に行なっていきましょう。
