合同会社の設立で節税できるケースは?節税効果やメリット・デメリットも税理士が解説

合同会社は徐々に認知度が上昇している会社形態で、特に個人事業主や副業をしているサラリーマンなどが会社を設立する際の選択肢になります。
結論から言うと、合同会社を設立することで節税できるケースがあります。
本記事では、個人事業主や副業をしているサラリーマンの方に向けて、合同会社の設立による8つの節税効果を中心に解説します。
| 1.法人税率が適用される 2.役員報酬を計上できる 3.消費税が免除される 4.赤字の繰越期間が延びる 5.経費の範囲が広がる 6.家族への給与を支給しやすくなる 7.退職金を支給できる 8.相続税の節税にもつながる |
また、株式会社と比較したときの合同会社のメリット・デメリットや選ぶ基準も解説するので、会社設立を検討している方はぜひお役立てください。
![]() | <この記事の監修者> 吉本 貴幸(よしもと たかゆき) 税理士法人吉本事務所 代表社員 税理士・行政書士 大学卒業後、1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。 |
合同会社の設立で節税できるケース
課税対象の所得が800~900万円を超える個人事業主は、合同会社を設立することで節税できるケースがあります。
合同会社も株式会社と同じ法人であり、個人事業主とは課税される税金が異なるためです。
また、副業による事業所得や不動産所得など、事業所得以外の所得があるサラリーマンも、合同会社の設立により節税できるケースがあります。
ただし、いずれのケースでも個々の状況次第で、一概には判断できないため、会社設立を検討する際はまず税理士に相談することをおすすめします。
合同会社と株式会社の違い
合同会社とは、出資者と経営者が同じである会社形態のことです。
一方、株式会社は出資者と経営者が切り離されているため、合同会社とは形態が大きく異なります。
また、合同会社は株式会社に比べて設立費用を抑えられるほか、決算公告が不要で設立のハードルが低いことも特徴です。
2006年に新設されたものの、近年では大手企業が株式会社から合同会社に移行した事例もあります。
有名な合同会社では、以下が挙げられます。
| ・Apple Japan合同会社 ・Google合同会社 ・アマゾンジャパン合同会社 ・合同会社西友 など |
なお、設立後の税金面は合同会社も株式会社もほとんど差はありません。
会社形態は異なりますが、どちらも法人であり支払う税金の種類や税率は同じです。
株式会社と比較したときの合同会社のメリット・デメリットは、後で詳しく解説します。
合同会社の設立による8つの節税効果
ここからは、合同会社の設立による8つの節税効果を解説します。
1.法人税率が適用される
個人事業主の所得に課税される所得税は「超過累進課税」という所得が上がれば税額も高くなる仕組みが採用されています。
所得金額に応じて、最大45%の税率が適用される方式です。
一方、合同会社を設立した場合は、法人の所得に対して法人税が課税されます。
資本金1億円以下の中小企業は最大23.2%と所得による税率の変動が小さいことから、事業の経営状況を踏まえて合同会社の設立を検討するとよいでしょう。
2.役員報酬を計上できる
経営者の給与として受け取る役員報酬は、経費に計上できます。
とはいえ、役員報酬の金額設定は高ければよいわけではなく、適切な金額を設定しなければ個人の所得税や住民税、社会保険料が高くなる点に注意が必要です。
また、法人設立後は給与所得者として「給与所得控除」が適用されるため、より税負担を抑えられます。
3.消費税が免除される
新たに合同会社を設立した場合は、原則として設立1~2期目まで消費税の納税義務が免除されます。
3期目以降は、通例通り基準期間の課税売上高によって納税義務の有無が判定されます。
なお、課税期間の基準期間と特定期間は以下の通りです。
| 個人事業主 | 基準期間 →前々年 特定期間 →前年の1月1日から6月30日まで |
| 法人 | 基準期間 →前々事業年度 特定期間 →前事業年度開始の日以後6か月 |
「基準期間」の「課税売上高」が1,000万円以下である法人または個人事業者は、消費税の納税義務が免除されます。
ただし、その前年の1月から6月もしくは前事業年度開始から6か月の期間(特定期間)における課税売上高(または給与等支給額)が1,000万円を超える場合は、課税事業者となります。
課税売上高とは、消費税課税の対象となる売上高をいい、土地の譲渡や貸付(1か月未満を除く)や保険診療収入など一定のものは消費税課税の対象外です。
また、1,000万円の判定をする際は、課税事業者である場合は税抜きで判定(売上高を1.1で割戻します)し、課税事業者でない場合(消費税を国に納付していない場合)は税抜きにする必要はありません。
ただし、資本金または出資金が1,000万円以上の法人は免除されない点に留意しておきましょう。
また、消費税の申告方法は「一般課税」と「簡易課税」の2種類から選択します。
納税義務が生じたらどちらが節税面で有利かを検討する必要があるため、税理士に相談するとよいでしょう。
4.赤字の繰越期間が延びる
青色申告を選択している法人は、最大10年まで赤字を繰り越せます。
翌年以降に大きな利益が出ても10年間は所得と損失を相殺(損益通算)できるため、より節税効果を引き出せます。
たとえば、所得額が600万円で損失額が400万円の場合は、相殺しきれない200万円を翌年以降に繰り越せる仕組みです。
とはいえ、資金繰りを考慮すると将来を見据えて計画的に解消させたほうがよいと言えます。
また、一定の要件を満たせば損失を前年の所得に繰り戻して、法人税の還付を請求することも可能です。
5.経費の範囲が広がる
個人事業主と法人では経費の範囲が異なり、法人のほうが経費に認められる費用が増えます。
具体的には、以下の通りです。
| 種類 | 個人事業主 | 合同会社 |
| 事業に必要な費用 | ○ | ○ |
| 代表者の 給与・賞与 | × | ○ |
| 家族への 給与・賞与 | △ ※要件あり | ○ |
| 交際費 | ○ | ○ |
| 社宅費 | × | ○ |
| 旅費日当 | × | ○ |
| 福利厚生費 | × | ○ |
| 社会保険料 | × | ○ |
| 生命保険料 | × | ○ ※法人契約のみ |
| 退職金 | × | ○ |
経費に認められる費用を把握して漏れなく計上すると、より節税効果を引き出せるでしょう。
6.家族への給与を支給しやすくなる
個人事業主が家族従業員への給与を経費に計上するには「その年を通じて6か月を超えて青色申告者の営む事業に専ら従事すること」が条件に含まれており、副業や別の仕事をしている家族には給与を支給しにくいケースがあります。
一方、合同会社を設立した場合は、実際に会社の業務を行なっている家族を役員や従業員として迎え、業務内容に見合った役員報酬や給与を支給できます。
会社の経費を増やしながら家族へ所得を分散できるため、世帯全体の所得税や住民税の負担を軽減できる可能性もあります。
ただし、勤務実態がなければ認められないため、業務に対して妥当と思われる金額を設定することが重要です。
社会保険の加入要件を満たす場合は保険料の支払いも生じるため、適切な金額は税理士のアドバイスのもと設定しましょう。
7.退職金を支給できる
合同会社では、役員や従業員に対して退職金を支給できるようになります。
退職金は一定の条件を満たせば経費として計上できるため、法人税の負担を軽減する効果が期待できます。
また、受け取る側も退職所得として扱われ、退職所得控除を適用できたり他の所得と分離して課税されたりなどのメリットもあります。
なお、個人事業主でも小規模企業共済などを活用して退職資金を準備できますが、会社から自分に退職金を支給することはできません。
この点は、法人化の大きなメリットの一つです。
8.相続税の節税にもつながる
個人で不動産を所有している場合は、相続が開始すると相続税評価額によって不動産に対する相続税が計算されます。
一方、合同会社を設立して会社が不動産を所有している場合は、不動産ではなく合同会社の持分または払戻請求権が相続税の対象です。
一般的に合同会社の持分または払戻請求権の評価額は不動産に比べて低い場合が多く、結果として相続税の節税効果も見込めます。
ただし、社員が1人の場合は原則として死亡した時点で合同会社は解散となり、相続人に引き継がれません。
そのため、複数の社員を選任しておくか、定款に相続人が引き継ぐ旨を定めておく必要があります。
個人事業主が合同会社を設立するメリット
合同会社を設立する節税以外のメリットを紹介します。
設立費用とランニングコストが安い
先述の通り、合同会社は株式会社より設立費用を抑えられます。
当事務所がサポートする場合の設立費用を参考にしてみてください。
《税理士法人吉本事務所の法人設立費用(実費込み・顧問契約あり)》
| 合同会社 | 60,000円 |
| 株式会社 | 202,000円~(資本金の額による) |
また、株式会社は決算公告が義務付けられており、決算ごとに費用が発生します。
一方で合同会社は決算公告の義務がなく費用も発生しないので、ランニングコストが安いのもメリットです。
経営の自由度が高い
合同会社は出資者と経営者が同じであるため、経営の自由度は高いと言えます。
株式会社を設立した場合は経営にかかわる重要な取り決めは、株主総会を開催する必要があるためです。
また、利益の配分も定款に定めることで自由に設定できます。
一方で株式会社は、株式数に応じて分配されます。
個人事業主より社会的信用度が高い
法人を設立することで社会的信用度が高まり、取引が円滑に進むほか、融資を受けやすくなります。
設立時は会社の基本情報を登記する必要があるため、安心や信用につながると言えるでしょう。
法人格での備品購入やリース契約ができるほか、FXなどでは法人格でのレバレッジで範囲を広げられることもあります。
また、法人格が要件とされる許認可の取得も可能です。
役員の任期がない
株式会社の場合は、最長で10年の任期があります。
一方で合同会社だと、重任登記ごとに発生する1万円程度の費用が省けます。
ただし、定款で任期を定めることも可能です。
有限責任しか負う必要がない
日常の取引などが万一破たんしても、責任範囲は出資額の範囲内でよいのも合同会社のメリットです。(代表者個人が保証人となっていない場合)
ただし、金融機関から融資を受ける場合は、会社の代表者個人が連帯保証人となることが多いので、融資された金額はほぼ「無制限」に責任を負うことになります。
個人事業主が合同会社を設立するデメリット
合同会社の設立は、デメリットも踏まえて検討しましょう。
社員同士のトラブルが起こりやすい
合同会社は意思決定の権利が社員平等のため、社員同士の意見が食い違うとトラブルに発展する恐れもある点はデメリットでしょう。
経営の自由度が高い反面、トラブルを防ぐための対策が必要です。
定款に別段の定めとして、社員過半数による賛否の規定をつくることもできます。
株式会社より社会的信用度が低い
合同会社の社会的信用度は個人事業主より高い一方で、株式会社には劣ります。
社長は「代表取締役」ではなく「代表社員」となり、一般の人は馴染みが薄く、株式会社より社会的な認知度が低いと言えます。
零細(小規模)かつ閉鎖的とみなされれば、相手先によって取引が制限されることもあるでしょう。
また、資金調達にかかる信用力が低いとみなされる可能性や、人材を募集する場合は「合同会社」という名称では応募が集まりにくい可能性もあります。
なかには不利な場面もあるかもしれませんが、最近は大手企業の影響により合同会社の認知度は上昇していると言えます。
資金調達の方法が限定される
株式会社は株式の増資による資金調達ができる一方、合同会社は補助金や助成金、借入が基本です。
大規模な資金調達はハードルが高いため、必要に応じて税理士へ相談するとよいでしょう。
合同会社と株式会社のどっちを選ぶべき?
合同会社と株式会社にはそれぞれメリット・デメリットがあり、どちらが適しているかは事業内容や将来の事業計画によって異なります。
順に詳しく解説します。
合同会社がおすすめな人
合同会社は、以下のような方におすすめです。
| ・設立費用をできるだけ抑えたい方 ・個人事業主から法人化を検討している方 ・1人または少人数で事業を運営したい方 ・出資を受ける予定がなく、自分で経営を行いたい方 ・スピーディーな意思決定を重視したい方 |
合同会社の最大の魅力は、設立費用を抑えられることです。
株式会社と比べると、設立時にかかる実費はおおよそ半額で済みます。
小さなオフィスや自宅を拠点に1人で事業を行うケースで、商号や会社の知名度にこだわらず、許認可の取得や法人化による節税を目的とする方には合同会社が有力な選択肢となります。
株式会社がおすすめな人
一方、株式会社は以下のような方に向いています。
| ・将来的に事業を大きく成長させたい方 ・投資家や金融機関から資金調達をしたい方 ・上場を目指している方 ・会社の知名度や信用力を重視したい方 ・大企業との取引や新規取引先の開拓を予定している方 |
どちらを選ぶか迷う場合は、どのような会社にしていきたいかを基準に考えるのがおすすめです。
設立費用だけで判断するのではなく、税理士に相談しながらご自身に合った会社形態を選びましょう。
会社設立に関するお悩みは
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税理士法人吉本事務所の実際の相談事例
「合同会社を設立したいのですが、自宅を本店所在地にする予定です。株式会社では代表者住所を一部非表示にできる制度があると聞きました。合同会社でも利用できるのでしょうか。」
合同会社の設立をご検討される方から、このようなご相談をいただくことがあります。
現在の代表取締役等住所非表示措置は、一定の要件を満たす株式会社を対象とした制度であり、合同会社の代表社員は利用できません。
一方、令和8年6月29日に公表された政府の「規制改革推進に関する答申」では、合同会社を含む法人へ制度の対象を拡大することや、住所に関する登記申請と同時でなくても住所非表示措置を申し出られる仕組みを検討する方向性が示されました。
現時点では制度改正の方針が示された段階ですが、実現すれば、これから合同会社を設立する方だけでなく、すでに合同会社を設立している方にも、プライバシー保護の選択肢が広がることが期待されます。
![]() | 合同会社を設立される方の中には、ご自宅を本店所在地として利用されるケースも少なくありません。 今回の答申では、合同会社にも代表者住所非表示措置を広げる方向性が示されました。 制度が実現すれば、会社設立時の選択肢が広がることになります。 現時点では正式な制度ではありませんので、今後の法令改正や法務省から公表される情報を確認していくことが大切です。 引用:規制改革推進会議「規制改革推進に関する答申」(令和8年6月29日) |
【FAQ】合同会社の設立に関するよくある質問
最後に、合同会社の税金対策に関するよくある質問を紹介します。
合同会社が支払う税金一覧は?
個人事業主が合同会社を設立した場合は、主に「法人税」「法人住民税」「法人事業税」「消費税」が課税されます。
| 法人税 | 法人の利益に対して課される税金 |
| 法人住民税 | 地域の行政サービスを維持するために課される税金 |
| 法人事業税 | 法人の事業に対して課される税金 |
| 消費税 | 商品・サービスの消費者に対して課される税金 |
合同会社の経費で落とせるものは?
個人と法人では経費の範囲は異なるものの、事業に必要な費用しか認められない点は変わりません。
合同会社の経費で落とせるものは、主に以下が挙げられます。
| ・広告宣伝費 ・交際費 ・会議費 ・旅費交通費 ・通信費 ・消耗品費 ・事務用品費 ・水道光熱費 ・地代家賃 ・福利厚生費 ・給料賃金 ・役員報酬 など |
なお、判断が難しい場合もあるため、正確に計上するには税理士のサポートが必要です。
合同会社の経費はいくらまで?
事業に必要な支出であれば、個人事業主でも法人でも経費に上限はありません。
ただし、経費のうち接待交際費は資本金1億円以下の中小企業の場合で、年800万円までまたは接待飲食費の50%のいずれかが上限です。
なお、飲食等の費用が1人あたり5,000円以下の支出は、交際費に含めず処理します。
合同会社は経費で車を買える?
合同会社も、社用車を購入すると取得費や維持費を経費に計上できます。
節税を視野に車を購入するなら、新車より中古車のほうがおすすめです。
詳しくは以下の記事もご参照ください。
税金対策に中古車がおすすめの理由や注意点も税理士が解説
節税対策や会社設立のご相談は税理士法人吉本事務所へ

具体的な節税対策や会社設立のお悩みは、税理士法人吉本事務所にご相談ください!
当事務所は税理士、社労士、行政書士が在籍し、会社設立時に必要な各種手続きや許認可申請もまとめて対応可能です。
また、会社設立後も長年の経験を活かし、顧問税理士として税務・会計を総合的にサポートいたします。
節税対策をはじめ、会社経営に関するお悩みにも丁寧に対応いたしますので、初めて会社を設立する方も安心してご相談ください。
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まとめ
個人事業主が合同会社を設立することで、節税できる場合があります。
法人の所得に課される法人税は、所得税に比べて所得による税率の変動が小さいためです。
また、合同会社は設立費用とランニングコストが安いほか、経営の自由度が高いなど、節税効果以外にもメリットが多いため、選択肢の一つとしてぜひ検討してみてください。
合同会社は、当事務所の会社設立専門サイトでも特集していますので、よろしければ参照してください。
会社設立サイト 税務トピックス「合同会社(LLC)設立について」
