【税理士監修】開業医に有効な節税対策《7選》経費に計上できる費用や注意点も解説
税金は所得に比例して負担が重くなるため、開業医が医院を経営するうえで適切な節税対策を検討する必要があります。
とはいえ、どのような方法を取り入れるべきかわからない方も多いでしょう。
本記事では、個人開業医に有効な7つの節税方法を詳しく解説します。
併せて、経費に計上できる費用や注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。
<この記事の監修者> 吉本 貴幸(よしもと たかゆき) 税理士法人吉本事務所 代表社員 税理士・行政書士 大学卒業後、1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。 |
開業医が節税対策を検討すべき理由
開業医には主に、所得税、住民税、個人事業税が課されます。
なかでも所得税は「累進課税制度」が採用されており、所得に比例して最大45%の税率が適用される仕組みです。
所得が増えれば負担も重くなるため、将来の税負担を軽減できるよう計画的に節税対策を検討すべきと言えます。
特に開業したばかりだと適切な節税方法がわからないことから、想定を上回る税金が課される場合もあるため、注意しましょう。
開業医に課される税金の種類一覧
開業医に課される税金は、以下が挙げられます。
・所得税 ・住民税 ・個人事業税 ・消費税(※) ・固定資産税 ・償却資産税 など |
(※)自由診療報酬や差額ベッド代など消費税の課税対象となるものの収入が1,000万円を超える場合には、2年後に消費税の納税義務者となります。
また、土地や建物など不動産を取得した際は、不動産取得税なども発生します。
節税対策の効果をより高めるために、どのような税金がかかるのかを事前に把握しておくとよいでしょう。
個人開業医に有効な節税方法《7選》
ここからは、個人開業医に有効な7つの節税方法を詳しく解説します。
1.経費を正確に計上する
所得税は、1年間の総収入から経費を差し引いた残りの金額(所得)に課税されることから、経費を漏れなく計上することで節税効果を得られます。
節税対策の基本と言えるため、経費を正確に計上できているかを定期的に見直すことが大切です。
なお、節税目的のみの余計な支出は一時的に経費を増やせるものの、手元のお金を減らしてしまい資金繰りに影響を与える恐れがあるので避けましょう。
開業医が経費に計上できる主な費用は、後ほど紹介します。
2.公的制度を利用する
公的な共済制度や年金制度を利用する場合は、掛金を経費に計上できます。
節税だけでなく万一の備えとしても役立つため、無理のない範囲で加入を検討するとよいでしょう。
代表的な制度は、以下の3つが挙げられます。
iDeCo | ・自分で掛金を運用して資産を形成する制度 ・掛金と運用益の合計額を受け取れる ・運用益は非課税で再投資される |
小規模企業共済 | ・廃業・退職時に備えて積み立てる退職金制度 ・受け取り方法は一括・分割を選択できる ・掛金の範囲内で貸付制度を利用できる |
経営セーフティ共済 | ・取引先が倒産した場合に借入ができる制度 ・掛金が800万円に達するまで積み立てられる ・無担保・無保証人で掛金の10倍まで借入ができる |
上記のほか、ふるさと納税を利用するのもおすすめです。
ふるさと納税は厳密には節税対策と言えませんが、お得な制度として活用してみましょう。
3.所得分散を見直す
先述の通り、所得税の税率は所得に比例しているため、所得を家族に分散する方法も節税対策として有効です。
イメージとしては、1人で1,000万円の所得を得る場合と、2人で半分に分けて得る場合では、所得税額が大きく変わります。
ただし、家族に支払う給与は実務に伴った金額でなければ認められません。
同居の家族に支払う給与は、租税回避を防止するために「青色事業専従者給与の届出」が必要であったり一定の制約があったりします。
また、社会保険適用事業者に該当する場合は同時に社会保険料の支払いが発生するため、節税効果とのバランスを考慮することも重要です。
4.償却資産を購入する
償却資産とは、土地・家屋以外の事業用資産で減価償却の対象となる固定資産のことです。償却資産を取得した際は、取得費を耐用年数で分割した金額を経費に計上するため、導入予定の設備や備品がある場合は、利益が出たタイミングで購入するとよいでしょう。
ただし、事業に必要なものでなければ本末転倒のため、節税ばかりに目を向けず長期的な視点で考える必要があります。
また、青色申告者で償却資産の取得費が一定の金額未満であれば、下記のような処理も可能です。
1.取得費が30万円未満であれば「少額減価償却資産」として一括で経費に計上できる。 ただし、償却資産税が課される。 2.取得費が20万円未満であれば「一括償却資産」として3年の均等償却で計上できる。 |
どちらが有利かの判断は、現在の状況を踏まえて税理士に相談することをおすすめします。
5.不要な資産を処分する
使用していないものを処分することで、除却損または売却損として経費に計上できます。
償却資産は所有しているだけで償却資産税が課されるため、定期的に固定資産台帳と資産の状況を照らし合わせて確認するとよいでしょう。
なお、償却資産を処分した場合は、廃棄したことを証明できるよう書面や写真などを残しておく必要があります。
6.概算経費の特例を適用する
概算経費の特例とは、一定の要件を満たせば実際の経費と概算で計算した経費のどちらか多い金額を経費に計上できる制度のことです。
個々の状況に合わせてシミュレーションしたうえで判断する必要があるため、税理士に相談したほうが賢明でしょう。
特例を受けるための要件は、以下の通りです。
1.医業または歯科医業を経営していること(柔道整復師、あんま、はり業、助産師、介護福祉士などは対象外) 2.社会保険診療報酬が年5,000万円以下 3.総収入金額の合計額が7,000万円以下 |
7.医療法人化を検討する
個人開業医から医療法人化すれば法人税の対象となり、節税できる場合があります。
法人税の税率は15~23.3%のため、特に所得が高い開業医ほど節税効果は高くなるでしょう。
ただし、法人化すると会計や事務処理の負担が重くなるため、税理士のアドバイスを受けつつ慎重に検討することが重要です。
開業医が経費に計上できる主な費用
この章では、開業医が経費に計上できる主な費用を6つ紹介します。
交際費
交際費は、事業に関係する者との接待飲食費などが該当します。
事業に関係のない支出は、認められません。
また、費用が1人あたり5,000円以下の場合は「会議費」などの勘定科目で計上します。
福利厚生費
福利厚生費は、健康診断や社員旅行など従業員の福利厚生として支出した費用が該当します。
節税だけでなく従業員満足度の向上や離職率の低下につながるため、積極的に活用するとよいでしょう。
設備費
設備費は、医療機器やパソコン、医院の建物、土地、車両費などが該当します。
経費の大部分を占めますが、節税目的のみの設備投資は避けましょう。
なお、プライベートと併用しているものは、一部しか認められません。
会議費
会議費は、医院以外の場所を利用した場合の支出も対象で、場所代や会議に伴う飲食費などが該当します。
先述の通り、接待交際費の支出が1人あたり5,000円以下の場合は、会議費として計上可能です。
人件費
人件費は、従業員に支払う給与や賞与、社会保険料などが該当します。
設備費と同じく、経費の大部分を占める費用です。
出張費
出張費は、出張に伴う交通費や宿泊費などが該当します。
なお、個人事業主の場合は自身への出張手当や旅費日当の計上は認められません。
開業医が節税対策を検討する際の注意点
この章では、節税対策の注意点を3つ解説します。
不要な設備投資は避ける
設備投資は、医療技術向上を目的としたうえで計画的に行う必要があります。
先述の通り、余計な支出は資金繰りに影響を与える恐れがあることに留意しておきましょう。
優先順位を決めて取り入れる
開業医の節税対策にはさまざまな方法があるため、現在の状況や将来を踏まえつつ優先順位を決めて取り入れることが大切です。
税理士に相談しながら本当に必要かどうかを見極め、有効な方法を選択するとよいでしょう。
合法の範囲で節税を実行する
合法の範囲内で税負担を軽減する方法を節税対策と呼び、一線を越えると節税ではなく「脱税」に当たります。
意図的でない場合もペナルティの対象となるため、自身で判断せず税理士のサポートを受けましょう。
開業医の節税対策に関するよくある質問
最後に、開業医の節税対策に関するよくある質問にお答えします。
旅費は計上できる?
家族旅行や観光を兼ねた出張費は、業務に関係のない部分は計上できません。
なお、出張費として計上できる交通費や宿泊費も、妥当な金額でなければ指摘される場合があるので注意しましょう。
車の購入費用は計上できる?
社用車の購入費用や維持費であれば、経費に計上できます。
どのような支出でも、事業に必要であることが前提という点は変わりません。
なお、節税対策で社用車を購入するなら、新車より中古車のほうが適しています。
車を用いた税金対策の方法や注意点を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
税金対策には中古車の購入がおすすめ!節税できる理由から注意点まで解説
自宅の家賃は計上できる?
自宅兼医院の場合は、事業に使用している部分のみ経費に計上できます。
家賃のほか、水道光熱費や通信費も同様です。
事業に使用した部分の割合を算出して計上することを「家事按分(かじあんぶん)」と呼びます。
開業医の節税対策は税理士法人吉本事務所へ
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また、税理士のほか、社労士、行政書士、保険外交員が在籍しているため、当事務所のみで効率的かつ幅広いご相談に対応可能です。
税負担のお悩みやその他医院の経営に関するご相談がございましたら、ぜひ一度税理士法人吉本事務所までお問い合わせください。
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まとめ
開業医の税負担を軽減するには、計画的な節税対策が必要です。
節税目的のみの不要な設備投資は避け、現在の状況や将来を踏まえつつ有効な方法を選択しましょう。
まずは税理士のアドバイスを受け、慎重に検討することをおすすめします。