小規模宅地等の特例「家なき子特例」とは?同居していない場合も適用できる要件や注意点を税理士が解説

家なき子特例とは、被相続人と同居していなくても適用できる小規模宅地等の特例のことです。
以下の要件に当てはまる場合は、家なき子特例を適用できる可能性があります。
・被相続人に配偶者・同居の相続人がいない
・3年以内に自分の持ち家に住んでいない
・相続する家を過去に所有したことがない
・相続する家を10か月間は所有し続ける
本記事では、家なき子特例とはどのような特例か、適用の要件や注意点も詳しく解説します。
![]() | <この記事の監修者> 吉本 貴幸(よしもと たかゆき) 税理士法人吉本事務所 代表社員 税理士・行政書士 1973年生まれ 法学修士。1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。 |
小規模宅地等の特例は同居していなくても適用できる
被相続人が住んでいた自宅を相続するときは、小規模宅地等の特例を適用できますが、配偶者以外の親族が相続する場合は、原則として被相続人と同居していることが要件です。
ただし、被相続人と同居していなくても、一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。
これが「家なき子特例」と呼ばれるもので、小規模宅地等の特例と同じく、被相続人が住んでいた土地の330㎡までは評価額を80%減額できます。
小規模宅地等の特例の家なき子特例とは
家なき子特例とは、被相続人と同居していない親族が被相続人の自宅を相続する場合に適用できる小規模宅地等の特例のことです。
「小規模宅地等の特例の中の特例」というイメージで、呼び名や適用の要件は違うものの、減額される割合は変わりません。
先述の通り、家なき子特例を適用できれば、被相続人が住んでいた土地の330㎡までは評価額を80%減額できます。
なお、家なき子特例は正式な名前ではなく、国税庁のホームページに「家なき子特例」として記載はありません。
家なき子特例を適用するための要件

家なき子特例を適用するためには、主に以下の要件を満たす必要があります。
・被相続人に配偶者・同居の相続人がいない ・3年以内に自分の持ち家に住んでいない ・相続する家を過去に所有したことがない ・相続する家を10か月間は所有し続ける |
順に解説します。
被相続人に配偶者・同居の相続人がいない
家なき子特例は、被相続人に配偶者や同居の相続人がいないことが要件です。
言い換えると、すでに配偶者が死亡しており一人暮らしをしていた、または離婚して(未婚で)一人暮らしをしていた場合です。
たとえば、父親、母親、子どもの3人家族がいたとして、父親が先に死亡し、母親が一人暮らしをしていた場合、配偶者や同居の相続人がいない状態を満たします。
よって母親が死亡し、子どもが母親の自宅を相続するときは、他の要件も満たせば家なき子特例を適用できます。
父親が死亡したときに発生する最初の相続(一次相続)では、配偶者である母親がいるため、家なき子特例は適用できません。
3年以内に自分の持ち家に住んでいない
相続が発生する前の3年以内に相続人が自分の持ち家に住んでいないことも、家なき子要件の要件です。
「自分の持ち家に住んでいない」とは、相続人が賃貸物件(賃貸マンションまたはアパートなど)に住んでいる状態を差し、他の要件も満たせば家なき子特例を適用できます。
注意点として、以下の人の持ち家に住んでいる場合は、自分の持ち家として扱われるため、家なき子特例は適用できません。
・相続人の配偶者(自分の夫または妻) ・相続人の子ども(自分の子ども) ・相続人の子どもの配偶者(自分の子どもの婿または嫁) |
平成30年の税制改正によって持ち家の基準が広がり、適用の要件が厳しくなりました。
なお、自分の持ち家に住んでいないことが要件のため、不動産を所有していても住んでいなければ問題ありません。
相続する家を過去に所有したことがない
相続する家(被相続人が住んでいた自宅)を相続人が過去に所有していたことがない場合は、他の要件も満たせば家なき子特例を適用できます。
これは、意図的に不動産の名義を変えて自分の持ち家に住んでいない状態を作り出すことを阻止する目的で、平成30年の税制改正によって要件として追加されました。
以前は持ち家がある状態でも家なき子特例を適用できる方法が存在しましたが、現在は通用しないため、過去に所有していたことがある場合、家なき子特例は適用できません。
相続する家を10か月間は所有し続ける
家なき子特例を適用するためには、相続する家(被相続人が住んでいた自宅)を10か月間は所有し続ける必要があります。
相続税の申告期限が死亡した日の翌日から10か月以内と定められているためです。
たとえば、1月1日に死亡した場合の相続税の申告期限は11月1日のため、期限の日を迎えるまでの10か月間は所有し続けなければなりません。
住む必要はありませんが、途中で売却した場合は家なき子特例を適用できなくなります。
家なき子特例を適用するときの注意点

家なき子特例を適用するときは、以下の3点に注意してください。
相続税申告書と必要書類を揃える
家なき子特例を適用するためには、相続税の申告が必要です。
相続税申告書と、以下のような必要書類を揃えて手続きをしましょう。
・被相続人の戸籍謄本または法定相続情報一覧図 ・遺言書または遺産分割協議書 ・相続人全員の印鑑証明書 ・戸籍の附表 ・賃貸契約書 など |
戸籍の附表や賃貸契約書は、家なき子特例の要件を満たしていることを証明するために提出します。
なお、戸籍の附表は本籍地の市区町村役場で取り寄せましょう。
相続税の申告期限は死亡した日の翌日から10か月以内のため、期限内に正しく申告できるよう準備を進めてください。
平成30年に要件が厳格化されている
先ほども触れたように、家なき子特例は平成30年に要件が厳格化されています。
以前より適用できる人の範囲は狭くなったものの、被相続人と同居していなくても要件を満たせば適用できるため、相続税が大きく変わる場合があります。
家なき子特例の要件をまとめると、以下の通りです。
・被相続人に配偶者・同居の相続人がいない ・3年以内に自分の持ち家に住んでいない ・相続する家を過去に所有したことがない ・相続する家を10か月間は所有し続ける |
要は、被相続人が一人暮らしをしていて、相続人が賃貸物件に3年以上住んでいる場合は適用できる可能性が高いと言えます。
特例の適用判断は税理士に相談する
家なき子特例には細かい要件があり、また税制改正によって今後内容が変わる可能性があります。
そのため、特例の適用判断は税理士に相談することをおすすめします。
また、家なき子特例を適用できなくても、税理士なら現状を踏まえた対策を検討できるため、相続税の負担を軽減するためには早いうちに相談しておくことが大切です。
相続税対策のご相談は税理士法人吉本事務所へ

相続税対策のご相談は、税理士法人吉本事務所にお任せください。
家なき子特例を含め相続税には複数の特例がありますが、要件が細かく、適用できるかどうか、どうすれば適用できるか、などは長年の経験がなければ判断が難しいものです。
当事務所には相続専門の税理士が在籍しており、相続税対策を得意としているため、お客様のご状況に合わせて最善策をご提案いたします。
相続税のご相談は初回無料でお受けしておりますので、相続税に関するご不安はぜひ税理士法人吉本事務所までお気軽にご相談ください。
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小規模宅地等の特例に関するよくある質問

最後に、小規模宅地等の特例に関するよくある質問にお答えします。
小規模宅地等の特例は持ち家ありでも使える?
小規模宅地等の特例は、相続人が自分の持ち家に住んでいる場合は適用できません。
なお、自分の持ち家には、配偶者(自分の夫または妻)、子ども(自分の子ども)、子どもの配偶者(自分の子どもの婿または嫁)の持ち家も含みます。
ただし、不動産を所有していても住んでいなければ、特例を適用できる可能性があります。
小規模宅地等の特例の同居はいつから認められる?
小規模宅地等の特例の同居は、期間に決まりはありません。
極端に言えば、相続が発生する1週間前からの同居でも、同居の実態があれば認められます。
ただし、小規模宅地等の特例を適用するためには、相続する家に10か月間は住み続ける、かつ所有し続ける必要があることを覚えておきましょう。
小規模宅地等の特例の同居は税務署にバレる?
小規模宅地等の特例は、同居の実態がなければ適用できません。
被相続人と住民票が同じでも、税務署が実際に同居しているかどうかを調べればすぐにわかります。
なお、厳密には同居と言えない状態でも、次のような場合は同居と認められます。
・単身赴任で一時的に別居していた ・被相続人が老人ホームに入居していた※別途要件あり ・区分登記されていない二世帯住宅に住んでいた など |
詳しくは、国税庁のホームページで確認できます。
国税庁:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
まとめ
被相続人と同居していなくても、家なき子特例の要件を満たせば小規模宅地等の特例を適用できます。
以前より適用できる人の範囲が狭くなりましたが、適用できた場合は相続税が大きく変わります。
税理士への相談も視野に入れ、専門家の意見を聞きながら慎重に対策を検討しましょう。
相続税のお悩みは、税理士法人吉本事務所までお気軽にご相談ください。
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